支援のネットワークをどのようにつくるか(2)

ホクミン(北海道クリスチャン宣教ネットワーク)~事前の教会協力が生かされる

 ホクミン災害支援担当 三橋恵理哉

 

ネットワークには、役割が先にあってそこに人や組織を当てはめる役割先行型と、人が先にあってその人にふさわしい役割が創造される人先行型と、2つの考え方があると思います。

役割先行型の場合、まずゴールがどのようなものかをイメージします。そして、そのゴールに向かって進んでいくための役割や手順が考え出されるので、うまく機能すると確実にゴールすることができます。しかし、その役割にふさわしい人が見つからないと、すぐに穴が開いてしまい、ネットワークはすぐにほころびてしまいます。「人材がいない」という声は、このことを表しています。1つのシステムとして全体像を構築しますので、その意味で自己完結型です。

一方、人先行型は人と人とのつながりが先にあります。どんな人がつながってくるのかは分かりません。いろんなタイプの人がいますので、その人にふさわしい役割は何であるかを考え、創り出していきます。向かう方向は共有しますが、ゴールのイメージを初めから持っている訳ではありません。また、自分たちで全部できるとも思っていません。その意味で自己完結型ではありません。

これから述べることは、人先行型のモデルです。

 

(A)事前にすること

1.普段から信頼関係の構築

信頼関係の構築には、多くの時間と労力が必要であることは言うまでもないことですが、これが絶対的に必要であるという認識がまず必要だと思います。私たちは誰かを知っているという時に、その人の肩書きや立場をまず思い浮かべるでしょうか? それとも趣味や性格を思い浮かべるでしょうか? ネットワークで重要になるのは後者です。お互いに、相手の人となりをよく知っていれば、一緒に働きを進めていく上で大きな助けになりますし、その人にふさわしい役割をより的確に見つけられるでしょう。

 

2.リーダーシップの確立

リーダーは誰か、それは災害が起こる前にはっきり決まっていなければなりません。災害時の初動のほとんどはリーダーが単独で決めていきます。混乱した状況を把握し、どんな支援が必要か、どんな支援が可能なのかを見極め、その方法を見いださなければなりません。リーダーがリーダーシップを発揮するために、リーダーが事前に決まっていること、リーダーシップが確立していることが非常に重要です。

この種のリーダーは、向き不向きがあります。組織をよくまとめられるリーダーが、混乱時に向いているとは限りません。混乱している時にこそ強いリーダーシップが求められます。

 

3.災害時のシミュレーション

シミュレーションをしておくことで、災害時に備えて必要な物品をそろえたり、必要な関係をあらかじめ築いておいたりすることができます。他の支援団体がどんな特徴をもって活動しているかを知ることで、実際に災害が起こった時に無駄な動きをはぶくことができます。また、シミュレーションは自分たちの限界を知るのを助けてくれます。

 

4.旗を揚げる。

私たちは支援しますよ! と、支援ネットワークの存在を公けにします。その際、母体が何なのかを明らかすることが大事です。誰が関わっているのか、どんな人たちが中心になっているのか、それが周囲の目にはっきりと分かるようにします。自己完結しない支援ネットワークは、他者との連携の中で動きますので、自分たちの旗印をはっきりさせておくことが大事です。

 

5.窓口を設ける。

支援ネットワークを旗揚げしたら、連絡先の窓口を開きます。協力したいと思う人や、一緒に活動したいと思う他の支援団体が、連絡を取ることができるようにします。

本部・支部の住所、電話番号、代表者名、担当者名などが分かるようにします。

 

 

(B)実際に機能するには

1.リーダーの決断、行動。

災害時の初動を決めるのはリーダーです。初動にかかわるほとんどはリーダーが単独で決断します。リーダーが決断し、行動しない限り、そのネットワークは動きません。

被災の規模が大きい時は、様々な支援が必要になります。どの地域にどんな支援をどんな方法で行うのかを決めるのも、リーダーの役割です。

 

2.現場で直接情報収集を

災害時はあらゆることが混乱しています。メディアも情報が偏ったりします。ですから、リーダーは支援しようとしている地域に、できるだけ早く行き、被災の状況を把握します。被災状況を実際に見、被災した人の話を聞き、現状を把握するプロセスが必要です。遠くでは感知できないものが必ずあります。

 

3.進捗状況をできるだけオープンにし、多くの人に素早く伝える。

支援活動が始まったら、その活動は公けのものです。出来る限りオープンにし、何をしているのかが外から見えるようにします。また時々刻々と事態は変化して行きますので、支援活動の様子は遅れることなく知らせる必要があります。

支援活動は見えないところで他とリンクしています。他の支援団体にも影響を与えていますし、支援したいと思っている方々にも影響を与えています。

 

4.支援ボランティアのルート確保と衣食住は、自給自足が原則。

支援ボランティアを派遣する際のルートをどこにとるかは、リーダー決めます。当然、ルート上に宿泊所が必要になる場合もあります。宿泊所を探すことも、大事なネットワークの活動です。

被災地は生活することそのものが危うい状態にありますから、支援ボランティアはすべてを用意して行くことが原則です。食べるもの、寝るところ、行き来の手段は自分たちで確保します。帰りのガソリンが必要なら、ガソリンを持参します。

 

5.現場部隊と後方支援の連携

見逃し勝ちなのが、後方支援の重要さです。支援活動を息長く続けていくためには、後方支援の役割は大きいです。継続して支援ボランティアを派遣して行く時、どんどん変化していく被災地の状況を把握し、次のボランティアにつないでいくのは後方支援の役割です。派遣ボランティアは1回で終わるかもしれませんが、後方支援はずっと続く、重い負担です。それを担う人が必要です。現場部隊と後方支援が一体となって働く時、支援ネットワークはより力強く奉仕することができるでしょう。

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