教会をボラセンにして中・長期的な支援活動を継続していくために 大友幸証

※この文章は、2016年4月の熊本地震で九州キリスト災害支援センターを立ち上げた際、3.11震災の経験から学んだことを大友幸証師に文章化していただいたもの。

 

2011.3.11東北大震災時直後から、教会をボランティアセンターとして開放し、5年間支援活動を継続してきた経験を持つ者として、熊本や九州地方でこれから教会をボランティアセンターにして、中・長期的な支援をしていこうと考えておられる方々のために、僭越ではありますがいくつかシェアさせて頂きます。

 

1.ミーティングの重要性

 

スタッフ間のミスコミュニケーションによって引き起こされる様々な問題が、支援活動をする中で最も深い精神的ダメージを教会や牧師に与える。このようなミスコミュニケーションをなくすためには、毎朝きっちりとミーティングをもち、その日の予定を確認することが必要。どんなに急いでいるときでも、めったなことでは、このミーティングをないがしろにはしない。私たちはだいたい毎朝20分をこの時間に取っている。

 

そして月一回の全体スタッフミーティングを欠かさない。ミーティングを集中してやるためには、ミーティングはできるだけ簡潔にすべき。リーダーがレジメの中に何が「報告」で何が「議題」かをあらかじめ定めて書き出しておく。ミーティングが長くなる原因は、「報告」が長くなってしまうことにある。「報告」は必要だが、次につなげるミーティングをするためには、「議題」をまず話し合い、決めるべきことを決めてから、時間があれば報告に移ると良い。

 

私たちの教会では、以上のビジネスミーティングの他に、月に2回、学びの時間を金曜日の午前中にとっている。働きを続けていくためには、どうしても霊的なインプットがなくてはならない。使徒の働きや、エペソ教会のことを学ぶことが、私たちにとっては霊的なリフレッシュになっている。

 

2.教会の宣教ビジョンを明確に

 

現在11から5年が経過し、被災地でボランティア活動を続けている教会は、支援活動と同時に宣教活動もしている場合が多い。

 

私たちの教会は、宣教とは、伝道活動と社会奉仕活動の二つの車輪によって進むと震災前から考えてきた。だから、全てが宣教活動であるという確信のもと、5年間の間支援活動続けてくることができた。ちなみに塩釜教会では支援活動を通して救われバプテスマを受けた人々はこの5年で16名いらっしゃる。

 

長期的なビジョンがあるところに、海外の宣教師たちや海外の献金が送られてくるという現象を見た。私たちの教会では、宣教に対していつでも答えられる明確なビジョンが震災前から確立されていた。フルタイムのスタッフを5年間も継続して雇用できたことは、そのような部分が大きいと思われる。中・長期的な宣教師も10名以上送られてきている。

 

ビジョンがはっきりしていると、特に海外の人々は、どのようにしてその教会をサポートして良いのかがわかりやすい。

 

ビジョンがはっきりしていると、教会員にもなぜ牧師が支援活動に関わらなければならないのかが説明しやすくなる。教会員の中に一致がなければ、長期的な支援活動をすることはできない。

 

雇用されているスタッフも、このようなビジョンがあると、被災地でのニーズが変わったとしてもビジョンにそって確信をもって働き続けることができる。そうでないと、何のための支援か分からなくなってくる時期が来る。

 

本来ならば、このような緊急事態に備えて、すべての教会の中で、社会奉仕活動と宣教との関わりを神学しておく必要があると思われる。幸い私たちの教会では震災前にそれがなされていたので、長期的な働きをすることができたことは、主の恵みによる。

 

3.ボランティアを受け入れるための宿泊場所の確保

 

宿泊場所を設置することで、長期間のボランティア受け入れが可能になる。

 

塩釜教会では隣接地に、震災から1年後に20名泊まれるボランティアセンターが建設された。この建物があったので、5年間もの間ボランティアを受け入れることができた。そして、それまで物資や人でごった返していた教会堂が、教会堂としての機能を回復した。これは教会員のストレスをだいぶ引き下げた。

 

このボランティアセンターが建設された場所は、もともと塩釜教会には、子供のための教育館にするというビジョン元、震災前に買っていた教会隣接地があった。そこにボラセンが代わりに建った。復興支援が終わった後は、このボラセンは、子供の教育館とする。そのような長期的なビジョンがあったために、このボラセン建設のために出資者も喜んで出資してくださった経緯がある。

 

宿泊場所として、トレーラーハウスの利用を提案したい。トイレやお風呂はすでに完備してあるし、不必要になれば売却もできる。しかし、その場合、設置する場所をどのようにして確保するかが課題となるだろう。

 

4.献金の受け取りと支出について

 

最初から様々な用途に使えるようにすることで、後々の変わってくる状況に対応出来る。使い道を指定しすぎると、状況が変わった時に使いにくくなってくる。

 

対応としては、献金募集時に細かく規定しないで大枠で集めるか、もしくはできるだけ多くの支出項目を設けるかで対処できる。

 

定期的に会計報告を出すことで、教会員や外部の方々に自分たちが正しく献金を使っていることをお知らせすることできる。これをしないと、教会員や不信感が出てくる。実際に、この献金の使い方が不明瞭で、問題が起きてしまった教会もある。

 

定期的なニュースレターでは、特にこの収支報告を明記すると良いだろう。

 

支出をする際には、いちいちスタッフ全員に確認すると時間がかかりすぎるので、担当役員を選出して、その役員に支出の確認をし、承認されれば支出するようにすることで、支出のスピードをあげることができる。

 

5.スタッフについて

 

長期的な活動をするためには、ボランティアコーディネーターが必要。

 

しばらくは二人くらい必要。コーディネーターと、チームを連れていくスタッフ。

 

短距離走ではなく、マラソンを走る気持ちを大切にする。

 

スタッフに休みはしっかりととらせる。可能ならば契約書に一年間の休みのスケジュールを明記して、スタッフが安心して有給休暇をとれるように配慮する。

 

ボラセンとして機能するためには、外部からの連絡を受け取り返信できるコーディネーターが必要。しかし、このコーディネーターも、単なる「雇われスタッフ」ということではなく、被災者の方々への熱意を持った人物でないと長続きしない。その人が2マイル行く人かどうか、つまり、自分に与えられた職務以上のことを、被災地のためにしても惜しくないという気持ちがあるか、見極めてから長期雇用する必要がある。

 

そのためには、まずは雇用期間を短く設定して(3ヶ月ほど)、その人が働きを継続していける資質があるのかどうかを見極める必要はあるだろう。

 

コーディネーターは、最も忙しいボジションで燃え尽きやすい。その忙しさを軽減するために、これからボランティアとして来たい方々が見ることができる情報をウェブサイトやfacebookにのせると、電話やEmailでのコミュニケーションが減る。hopemiyagi.org参照。

 

会計スタッフはかなり大切なポジション。パートタイムでの雇用でも良いので、しっかりと管理できる人を選び、大切な献金の管理をしてもらう。

 

6.教会員のケアを大切に

 

多くの知らないボランティアが毎日のように教会に寝泊まりすることは、ある教会員にとっては、ストレスになっていた。特に、キッチンやトイレの使い方など。ボランティアを受け入れる際には、教会員がどのように感じているのかを定期的に確認する必要がある。

 

それらのストレスを幾らかでもさげるために、ボランティアが教会施設を使うにあたってのガイドラインを作成すると良い。トイレの使い方、キッチンの使い方など、他教会員が気になっていることを明記する。海外のボランティアは日本の習慣を知らない場合が多いので、ガイドラインをバイリンガル表示にすると役だつ。

 

ボランティア活動について、活動している人々と教会員が定期的なコミュニケーションを取る必要がある。礼拝後の報告の時間などで、前の一週間でどのようなボランティアが来て、スタッフと一緒にどのような活動をしたのか、簡単に報告すると良い。

 

ニュースレターは、外部対しての大切な情報発信だが、実は教会員にとっても、教会が何をしているのかをしるための重要な情報源。

 

7.牧師家庭のケア

 

働きが前進していく中で、どうしても牧師家族が犠牲になりやすい。牧師と牧師の家族が激務の中で定期的なケアがなされることは、とても重要。現場から時々離れてゆっくりできる時間をもつことは大切。そのための経済的な支援を、JEAなどの大きな団体がしてくれることを期待している。

 

しかし、同時に牧師家族だけが特別扱いされて、他のスタッフがケアされないで取り残されてしまうことへの不公平感がでないように、スタッフのケアも重要。

 

8.情報の管理

 

長期的な関わりを被災地の方々としていくためには、まずこちらが名前を覚えて、積極的に関わる必要がある。その中で「平安の子」が見出される場合もある。関わった方々の写真と一緒に、彼らの連絡先をわかる範囲で記入してファイリングしておくと、再度訪れた時に、より丁寧な対応ができる。

 

どんな時でも共におられるイエス様を紹介することが、本当の意味での支援。私たちはパンと交換で福音を語るわけではない。しかし、福音について聞かれたら、答えられるようにしておくことはとても重要であり、それは私たちクリスチャンボランティアにしかできないこと。

 

長期的に関われば関わるほど、福音を提示する機会が増えてくる。一度きりの関わりではなく、長期的な関わりをしていくための一歩として、ファイリングは重要かと思う。

 

9.全人的な支援の重要性:支援の神学

 

スリランカで震災支援と宣教活動を続けておられる、エイドリアン・デビッサ先生の言葉が、私の震災支援活動に大きな指針を与えた。「かつて教会は人々の霊的な部分のニーズにだけに応えようとしてきた。しかし、人間は霊的な側面だけで成り立っているわけではない。知性、肉体、感情、霊の4つの側面から成り立っている。もし教会がこの4つの部分で人々のニーズに応えていくことができるならば、自然と福音が伝わっていき人々は救われていく。」

 

食べ物を配布して肉体の必要に応えること、楽しいイベントやコンサートを開き人々の感情の必要に応えること、生きていくために必要な「知恵」(箴言など)の提供を通して知的な部分の必要に応えることは、霊的な必要に答えるのと同じくらい大切だということを知り、支援活動を継続していくための、大いなる励ましをいただいた。全人的な関わり、これが重要。

 

 

以上、皆様が中・長期の支援活動を続けていくために課題になると思われることを、徒然なるままに、且つかなり具体的に書き出してみました。考えるきっかけにしていただければ幸いです。

 

皆様のお働きのために、日々お祈りしております。

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